学生インターン生採用の際の注意事項

2022.10.20

弁護士 植村 和也

スタートアップ・ベンチャー企業においては、意欲のある学生をインターン生として採用し、実習という形で業務に関与させるケースがあります。

しかしながら、インターンシップに際して通常業務に関与させすぎるあまり、インターン生が労働者に該当すると評価されることがあります。その場合、労働基準関係法令が適用され、当該インターン生に対して、最低賃金額以上の賃金を支払う必要が生じるほか、一部の社会保険へ加入させる義務が生じることになります。

上記の事態を回避するためには、インターンシップの制度設計として、インターン生が労働者に該当すると判断されないような内容にすることが必要となります。

具体的には、インターン生が労働者に該当するか否かは、

・ 実習内容が見学や体験的なものであるか否か
・ 使用者の指揮命令を受けるか否か
・ 学生の活動による利益・効果が会社に帰属するか否か

という要素を考慮して判断されます。

例えば、インターン生が行う実習が、通常一般労働者とは明確に区別された場所で行われ、何らか業務に関与する場合でも、軽度の補助的作業に従事する程度にとどまり、インターン生が直接利益活動に従事することはないというものであれば、インターン生の労働者性は否定されやすいと考えられます。

もっとも、インターンシップを通して、インターン生が実習内容に習熟していき、スタートアップ・ベンチャー企業における人的リソースの不足も相まって、業務への関わりが深まっていくケースは少なくありません。その場合には、インターン生の立場で実質的に業務に従事させ続けることは企業・インターン生双方にとって健全な状態ではないといわざるを得ず、インターンシップからアルバイトに切り替えることも検討すべきでしょう。

なお、海外からの留学生をインターン生として採用する場合、インターンシップは在留資格のうち「特定活動」に該当するため、特定活動ビザが必要となります。さらにこの場合には、インターン生が在籍している海外大学と契約を締結する必要などが生じます。

スタートアップ・ベンチャー企業においては、優秀なインターン生がマッチして大学卒業後などに企業のメンバーの一員となり、将来的な企業の成長につながるということも多くあるので、インターンシップの適正な運用について、必要に応じて、弁護士の意見を求めることが有益といえます。