採用選考時に配慮すべき事項

2022.10.10

弁護士 植村 和也

新しいメンバーを雇用で向かい入れるに当たっては、その方の資質や能力だけでなく、人柄など組織のカラーとの親和性を踏まえた判断が必要になるものかと思います。

しかしながら、法律上、採用選考に際して、必要な範囲を超える個人情報を同意なく収集してはならないとされており、次のような事項を応募用紙等に記載させたり、面接で尋ねて把握したりすることは、違法とされる可能性があります。

① 本人に責任のない事項
・ 本籍・出生地に関すること
戸籍謄(抄)本や住民票の写しを提出させることはこれに該当します。
・ 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産等)
家族の仕事の有無・職種・勤務先等や家族構成がこれに該当します。
・ 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設等)
・ 生活環境・家庭環境等に関すること

② 本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)
・ 宗教に関すること
・ 支持政党に関すること
・ 人生観、生活信条に関すること
・ 尊敬する人物に関すること
・ 思想に関すること
・ 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴等)、学生運動など社会運動に関すること
・ 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

また、採用選考時に次の事項を実施することも、職業差別につながるものとされています。

・ 身元調査などの実施
例えば、「現住所の略図」を提出させることは、生活環境等の把握や身元調査につながる可能性があります。
・ 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
雇入れ時においては労働者に健康診断を受診させる必要がありますが、採用選考時に、応募者に対して一律に血液検査等の健康診断を実施することに合理性・必要性はないとされています。

採用選考時の企業側の姿勢は、企業のレピュテーションにもつながり、将来的に優秀な人材の確保に影響を及ぼす可能性もありますので、十分注意しましょう。