資金調達における持株比率

2022.8.10

弁護士 藤田 増夫

ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達ができることは喜ばしいことですが、その際の持株比率に注意しなければ、起業家が経営から排除されるおそれがあります。そのため、創業段階から持株比率を含めた資本政策を十分に検討しておく必要があります。

VCから資金調達を受ける場合には、投資契約が提示されることが多いですが、当該契約の中でも重要な事項の一つが株式に関する事項です。VCに5割を超える議決権を与えると株主総会の普通決議事項(会社法309条1項)については、VCの意向どおりに決められることになります。取締役の選任は株主総会の普通決議事項であり、VCに5割を超える議決権を占められてしまえば、取締役構成もVCの意向どおりに決められ、起業家が取締役から外されることも考えられるのです。このように5割を超える議決権をVCが有するか否かが重要ですが、3分の1を超える議決権を取得するかも重要な境目です。すなわち、定款変更や組織再編などを行うためには、株主総会の特別決議(会社法309条2項)が必要であり、仮にVCが議決権の3分の1を超える議決権を有することになれば、定款変更や組織再編等を実行するためには当該VCの了解を得る必要が生じることになります。

以上のとおり、投資を受けるためには、VCがある程度の株式を保有することはやむを得ないのですが、調達できる金額等の事情を考慮して、合理的な持株比率となるよう、VCと交渉を進める必要があります。その際には、弁護士にも助言等を求めて法的支援を受けながら交渉を進めることが有用です。